【医師が解説】犬に多い皮膚疾患 「犬アトピー性皮膚炎」って?

アニコムペット保険さんの統計によると、犬の患者さんたちのうち、実に4割以上が皮膚または耳の疾患で来院されているというデータがあります。

皮膚で悩んでいるわんちゃんはとても多いんですね。今回は犬の皮膚病の中でも多い“犬アトピー性皮膚炎”について紹介したいと思います。

犬アトピー性皮膚炎ってどんな病気?

犬アトピー性皮膚炎は、環境抗原(アレルゲン)に対する過剰な免疫反応(アレルギー反応)により生じる皮膚炎のことを言います。

遺伝や体質によるものが大きい病気で、他の犬にうつることはありません。

環境抗原(アレルゲン)とは、普段生活している環境の中にある物質で、例えばダニ、花粉、ハウスダスト、細菌、カビなどをさします。

アトピーのわんちゃんは皮膚バリア機能が低下している

犬アトピー性皮膚炎のわんちゃんの皮膚は、生まれつき“皮膚のバリア機能が弱い”といわれています。

“皮膚バリア機能”とは外部の様々なアレルゲンや異物が皮膚の中に侵入するのを防いだり、体内の水分の蒸発を防いだりする働きのことです。このバリア機能が低下するとアレルゲンが皮膚の中に侵入しやすく、さらに炎症を引き起こしやすくなります。

皮膚バリア機能が低下した皮膚では、アレルゲンが皮膚の中に侵入しやすく、結果アレルギー反応を引き起こしてしまうのです。

犬アトピー性皮膚炎を起こしやすい犬種

遺伝が関与するため、発症しやすい犬種がいます。

  • 柴犬
  • シーズー
  • ウェストハイランドホワイトテリア
  • フレンチ・ブルドック
  • ゴールデンレトリーバー、ラブラドールレトリーバー
  • ダックスフンド
  • プードル

などの犬種で多く見られます。

提供:シリウス犬猫病院

どんな症状が出るの?

主な症状はしつこい痒みです。

若い年齢(1~3歳)から発症することが多いです。かゆみから患部を掻き壊してしまうことで、炎症や脱毛、色素沈着が生じます。

耳や顔、足の先(指の間)、脇の下、お腹周り、足や尾っぽの付け根などに症状が現れやすいです。

どうやって診断するの?

犬アトピー性皮膚炎の診断を行うことができる特定の検査はありません。

まずは、症状が犬アトピー性皮膚炎と似ている疾患(ノミの寄生、膿皮症、マラセチア性皮膚炎、食物アレルギーなど)を除外します。

ノミの寄生の除外
その他の外部寄生虫の除外
膿皮症やマラセチア性皮膚炎の除外
食物アレルギーの除外

犬アトピー性皮膚炎かどうか診断

犬アトピー性皮膚炎の診断にはこのような診断ステップが必要であり、確定診断するためには、通常2~3か月かかる場合が多いです。

また、アレルギー検査を実施することもありますが、これはあくまで補助的な診断で確定診断できるものではありません。世界的な犬アトピー性皮膚炎の診断のガイドラインには現時点では組み込まれておらず、結果は治療の参考として使用します。

犬アトピー性皮膚炎の治療

痒みや症状を緩和するための薬物療法スキンケアなどを組み合わせて行います。食事を工夫したりサプリメントで栄養を取り入れるなどの強い皮膚作りも重要です。

犬アトピー性皮膚炎は様々な因子が複雑に関与して発生し、他の皮膚トラブルも併発することが多い皮膚病です。そのため、わんちゃんごとにオーダーメイドで多面的な治療を行っていきます。

また、アトピー性皮膚炎は基本的には治る病気ではないので、生涯付き合って行く必要があります。治療は長期間続けても負担にならないよう、わんちゃんの性格や環境を考慮し、かかりつけの動物病院と相談しながら二人三脚で治療していくことが大切です。

もしアトピー性皮膚炎と診断されても、うまく管理することができればご家族とともに楽しい生活を送ることは可能です。自己判断せずに、ぜひ動物病院に相談してみてくださいね。